Episode1

福廣 匡倫(ふくひろ・まさみち)

晃立工業株式会社 代表取締役社長

NAID JAPAN 第一期Boarder

晃立工業株式会社は、鉱石を一気に砂サイズに粉砕できる「製砂機」のメーカーです。半世紀以上にわたって積み上げてきたこの製砂技術を応用し、国内史上初のHDDやSSDに対応したマルチメディアシュレッダー・マイティセキュリティシリーズを展開しています。

 

「これで本当にデータ消去できているの?」

今から20年近くも前のこと、私はお客様の機密情報媒体(書類やコンピューター用のバックアップテープ等)を専門にお預かりする倉庫会社で、営業マンとして勤務していました。

ある時、お預かりしていたコンピューター用のバックアップテープの保存年限が到来したとのことで、倉庫内にあった大型破砕機で、物理破壊による機密抹消処理業務をお受けすることになったのですが、その時に立ち会いされたお客様から言われたのが冒頭の一言でした。

その当時、バックアップテープの機密抹消処理用を謳った大型破砕機というものは私が知る限り存在しておらず、他の目的で開発された大型破砕機を便宜上使用するしかなかったのです。そのため、テープを格納している外側のプラスチックケースは破壊されるのですが、肝心の情報記録部分であるテープは長い状態で排出されていました。お客様の不安は尤もな話なのですが、まだ個人情報保護法も施行されていなかった頃のこと、機密抹消処理業務を行っているだけでも先進的なことなのだと、お客様に返す言葉がない自分を正当化していました。

 

 

「使命の目覚め」

しかしその後、個人情報保護法の施行により情報に対する意識が高まり、より一層機密抹消処理業務の相談を受けることが増えていきました。その中で、「USBメモリやカードのような小さなものは、大型破砕機に通しても原形のまますり抜けてしまうため対応できない」という事実を突きつけられ始めたのです。

高度情報化社会にあって、情報記録媒体も様々な種類のものが出てきたにも関わらず、お客様の要望すべてにお答えできないことに対する悶々とした気持ちに、「これで本当にデータ消去できているの?」という、あのお客様の言葉がフラッシュバックしてきました。

 

就職活動時には見向きもしなかった、鉱石を粉々に粉砕して砂を生産する製砂機メーカーであった家業。しかし、そのホームページに記載してあった、あるお客様の声が目に留まります。

 

砂作りをしたいなら、砂作りを目的として開発された機械を使うべき。生まれは大事。

 

あらゆる情報記録媒体を、本当に安心できるレベルにまで確実に物理破壊し、情報漏えいをシャットアウトする。そのことを使命とした専用の粉砕機がないのなら、この手で作ろう。

 

この大きな目標を胸に、私は後継することを決心しました。

マルチメディアシュレッダー マイティセキュリティシリーズの誕生です。

 

らゆる情報記録媒体を、本当に安心できるレベルにまで確実に物理破壊し、情報漏えいをシャットアウトする。そのことを使命として誕生した、マルチメディアシュレッダー・マイティセキュリティシリーズでしたが、発売から2~3年は鳴かず飛ばず、ほとんど売れませんでした。それもそのはず、情報セキュリティの世界では全く無名の鉱山砕石機械メーカーが、それまで世の中に存在せず認知されていないマルチメディアシュレッダーをPRしても、的確なお客様に情報を伝えることができません。そこで、東京ビッグサイトで開催される情報セキュリティに関する展示会への出展を決定しました。

 

展示会が始まってみると、ほとんどがIT系のサービスやソフトウェアで、アナログな装置を出展している当社のブースは異質でした。結果としてはそれが功を奏して、予想以上に多くのお客様に立ち寄っていただくことができました。ところが、その多くのお客様が口にされたのが「すごいな(笑)だけど、本当にここまで粉々にしないといけないの?」という言葉でした。

 

私としては、前職でのお客様の声をもとに、完全に粉々の状態に物理破壊しなくてはならない、というのが機密抹消において当たり前だと思い込んでいましたが、では一体どこまで物理破壊するのが正解なのか、という明確な答えはまだ持ち合わせていませんでした。

 

 

「見えてきた答えへの道」

いずれにしても、この展示会への出展を契機に、マルチメディアシュレッダー・マイティセキュリティは、中央官庁様向けを中心に導入実績が着実に伸び始めました。ここから、実際に導入いただいたお客様に対して、なぜ当社の粉砕機を選ばれたのか、という生の声を集めて回りました。一体どこまで物理破壊するのが正解なのか、ということへの答え探しです。

 

この活動を通じて、

「携帯電話を水没させても、チップが無事である限りほぼデータは抽出できる」

「米国との関係で粉々に物理破壊することを要求される」

「日本は情報後進国なので明確な規格が存在せず、データ消去は欧米を参考にするべき」

といった知識が少しずつ蓄積されていきました。

 

その後も当社は継続して展示会へ出展し続けましたが、ある時そこで米国における機密抹消処理サービス企業への認証制度を日本でも広げていこうという団体と出会います。NAID JAPANです。

 

つづく

 

TOGETHER to the FUTURE

機密処理産業の未来を一緒に。

一般社団法人NAID JAPAN